肝炎と肝癌
公立長生病院 内科医長 藤島知則
厚生労働省の統計によると、日本では2004年に102万8千602人の方が亡くなりました。そのうち肝癌による死者は3万4千510人で、癌による死亡者数のうち、男性では、肺癌、胃癌に次いで第3位。女性では、胃癌、大腸癌、肺癌に次いで第4位でした。また、その数は年々増加しており、1975年には約1万人だったので、30年弱で約3.5倍に急上昇しています。
このように、肝癌は年々増え続けていますが、その主な原因は、C型肝炎やB型肝炎といった、ウイルス性肝炎です。最近の全国調査によると、肝癌の大部分を占める肝細胞癌の患者さんで、C型肝炎ウイルス陽性の方は72.3 %、B型肝炎ウイルス陽性の方は16.8%でした。実に肝細胞癌の9割の方がC型もしくはB型肝炎に関係していたのです。肝細胞癌の予防、早期発見には、肝炎ウイルスの検査がかかせません。
C型肝炎、B型肝炎は、共に血液などを介してウイルスが感染することによって起こります。B型肝炎は、出産時に母親から感染する母子感染が主な感染経路でしたが、ワクチンの開発、出生時母胎スクリーニング検査の普及などにより、日本では、現在は新たな患者さんの発生は激減しています。C型肝炎は、輸血や入れ墨などの行為によって感染しますが、これも輸血スクリーニング検査の施行などにより、新たな感染は減りつつあります。しかし、現在C型肝炎患者さんは200万人程いると推定されており、しかも、輸血の経験など、明らかな感染の契機がない方が約半数を占めています。あなたは大丈夫ですか?
C型肝炎、B型肝炎は、血液検査によって感染の有無を調べることができます。健康診断などの機会に肝機能異常を指摘された方や、過去に手術をして輸血を受けたかもしれない、家族に肝臓病の方がいる、入れ墨がある、など心配な方は、是非検査を受けることをお勧めします。検査の結果、肝炎の感染が分かった場合、特にC型肝炎で肝臓に炎症が起こっている状態であれば、インターフェロンという注射によるウイルスの駆除や、肝炎を抑える薬を内服するなどの治療があります。
また、定期的な検査を行なうことにより、たとえ肝癌が出来たとしても、早期発見、早期治療が期待できます。
C型肝炎ウイルスが発見されたのは1989年です。比較的最近明らかになった病気ですが、治療法は目覚しい勢いで進歩しています。ウイルスを駆除できるインターフェロン治療は1992年に保険適応になりました。当初はウイルスの駆除率は30%程度で、治療開始にあたっては入院し、肝生検などの検査を受ける必要がありました。週に3回程度の注射が必要で、負担の大きい治療でした。現在はペグインターフェロンという新しいインターフェロンや、リバビリンという、インターフェロンと組み合わせて使うことにより、治療の効果を高める薬があります。ウイルスのタイプや量によって異なりますが、60~90%程度のウイルス駆除が得られるようになってきました。
また、治療開始にあたって入院は必須ではなく、注射も週に1回で済み、比較的楽に治療が受けられるようになっています。
万一、肝癌が出来てしまった場合には、どのような治療があるのでしようか。かつては手術が第一選択でしたが、最近は経皮的ラジオ波焼灼療法(RFA) という内科的な治療が急速に広まり、標準的な治療となってきています。RFAは針状の電極を 腫瘍に刺し、電磁波による熱で腫瘍を破壊する治療です。
日本では1999年から治療が行われるようになり、2004年4月には保険適応となっています。手術と比較すると、お腹を切らずに済むので、平均入院期間は数日で、術後の回復も早いという特徴があります。
また、負担が軽いため、手術が出来ないような肝機能の悪い方でも治療が出来る利点もあります。
このように、肝炎や肝癌の診断、治療は急速な進歩を遂げています。肝臓の病気は自覚症状に乏しいことも多く、C型肝炎に感染しているのに気づいていない方が全国で100万人ほどいると推定されています。肝臓の病気が心配、肝臓の病気でお悩みの方は、是非かかりつけの医師に相談され、必要であれば、お近くの専門医に紹介を受けるよう、お勧めいたします。
◆参考文献・図書
藤島知則・小俣政男:ウイルス肝炎の臨床の現状と未来-HCV発見後から-Medical Practice 19(6):926-930,2002
藤島知則・小俣政男:肝疾患におけるインターフェロン治療の新たな展開.肝胆膵:45(6) :1039-1044,2002
藤島知則:肝細胞癌の内科的治療-RFAを中心として-.エキスパートに学ぶ治療戦略:161-164,2003,総合医学社
藤島知則・小俣政男:肝がん検診の二次精検・住民検診・職域検診・人間ドックのためのがん検診計画ハンドブック:107-109,2004,南江堂
◆藤島知則プロフィール
東京大学大学院卒業
東京大学附属病院、関東中央病院、NTT東日本関東病院勤務を経て現職医学博士、内科専門医、消化器病専門医、消化器内視鏡専門医、肝臓専門医専門は肝癌の治療
ラジオ波焼灼療法施行症例数 255



