大腸癌について
公立長生病院 外科医長 笹川真一
本邦での大腸癌罹患率、死亡率はともに増加しており、癌による死亡原因の中では肺癌、胃癌についで3番目になりました。癌罹患患者の推計では平成27年の大腸癌患者は約19万人以上に及び胃癌、肺癌を抜いて第1位になると予測されています。大腸癌の発生には遺伝的因子よりも環境的因子の比重が大きいと考えられ、近年増加してきた最大の要因として食生活の変化があげられるようです。
具体的には食事の欧米化、高脂肪食、低線維食への変化もしくは動物性脂肪の摂取増加の関与が大きいと言われています。
一次予防(発病の予防)
(1) 食事:肉食(高脂肪食、動物性脂肪)に偏り過ぎないこと。野菜や穀物を充分に摂取すること。
(2) 便通:便秘をしないこと。等が一般的に大事といわれています。
二次予防(早期発見、早期治療)
(1) 便潜血検査
(2) 有症状による注腸検査、大腸内視鏡検査等をめんどうがらずに行うことをお勧めします。
診断(症状)
(1) 無症状:早期癌のほとんどが無症状であり早期発見するためには便潜血検査によるスクリーニングが重要と考えます。
(2) 血便:便に鮮血から暗赤色の血液の混じる場合
(3) 便秘、下痢、便柱が細い等の便通異常
(4) 腹部膨満感、腹痛
(5) 腫痛触知
(6) 貧血、体重減少、全身倦怠感等の全身症状
(7) 腸閉塞状態:腫瘍の増大により腸が狭窄を来たし、排ガス排便ができず腹部膨満、嘔吐、腹痛等を来たした状態。以上のような症状が考えられます。
(検査)
(1) 便潜血検査:本邦ではヒトへモグロブリンに対する特異抗体を用いた免疫便潜血2日法が主流です。
(2) 注腸造影検査:肝門から造影用のチューブを挿入、そこからバリウムと空気を注入し、体位変換を行い、X線写真を撮影します。
(3) 大腸内視鏡検査:紅門より腸内に直接カメラを挿入し、腸内の観察や病変部からの細胞採取などを行います。
(4) その他:癌の浸潤の程度や転移の有無の診断のため、腹部超音波検査、CT 、MRI検査などを行います。
治療
癌の進行度により選択できる治療法が異なってきます。癌細胞は正常な細胞と異なり、からだの遺伝情報にしたがうことなく無尽蔵に増殖します。そのため大腸の粘膜から発生し徐々に時間をかけて粘膜下層、固有筋層、漿膜下組織、漿膜と深く根をはっていきます。その過程でリンパ節への転移や血行性に肝臓や肺への転移を来たす可能性が生じます。更に癌病巣が漿膜を貫いて腹腔側に露出した場合、そこから癌細胞が直接腹腔内に広がる腹膜播種転移の可能性が生じます。これらを総合的に判断することにより病期分類(ステージ)が決定します。しかし病期分類は手術等による切除標本の詳細な病理検索の結果を待たないと決まらないことが多いです。
よって治療法の第一の判断は注腸や大腸内視鏡による癌病巣の壁深達度評価であり、[早期癌か?進行癌か?内視鏡的な治療が可能か?手術が必要か?] が決まってきます。進行癌の場合、引き続き行われる超音波検査、CT 、MRI による全身検索によって手術が可能かどうかや具体的な手術術式が決まってきます。
(1) 内視鏡的治療:ポリープ癌(ポリープの一部に癌が含まれているもの)、癌の壁深達度が粘膜及び粘膜下層の極浅い範囲にとどまる早期癌に対 しては内視鏡下による粘膜切除術が適応となります。
(2) 手術的切除:早期癌の中でも病変の形態や大きさから内視鏡治療が困難な症例や進行癌に対しては、手術による癌病巣及び所属リンパ節の郭清術を含む広範囲な切除が必要となります。病変の位置、広がり、隣接臓器への浸潤の有無、肝臓への遠隔転移の有無などにより、病状に適した術式を選択することとなります。
(3) 化学療法:進行癌の術後で再発予防のための補助的な追加治療として行われる場合と、手術的に根治切除不能な症例や術後の再発症例に対して行われる場合があります。各種抗癌剤の単独あるいは併用療法、内服治療あるいは外来点滴治療、入院点滴治療等、病状に適した抗癌剤、投与方法が選択されます。
大腸癌の治療は癌病巣の切除がまず第一の目標となります。癌病巣を切除するにあたって、「いかに確実に癌病巣を取り除くか?いかに根治性を高めるか?」といった問題がまず浮かび上がってきます。一方で大腸癌に対しての手術術式、治療方針が標準化され、更に診断技術、内視鏡治療の発達、腹腔鏡手術に代表される低侵襲手術、機能温存手術の検討が進み、近年、症例によってですが、「いかに低侵襲に治療を行うか?いかに機能を温存するか?」といった問題がクローズアップされています。
個々の患者さんの病態を過不足ない検査にて把握し、的確な診断をまず行うこと。その診断に基づいて、個々の患者さんにおいて多様化してきた治療法に関して、充分な説明と理解を得て、最適な治療法を選択し、行うことが癌治療を行う上で重要と考えます。
最後に、大腸癌はまず予防、早期発見に尽きます。はっきりとした症状が出てからでは癌の早期発見はまず難しいと思っていいと考えます。自分の体調に気を配ること、食事や便通に関心を持つことが大事だと思います。
まずは簡単な便潜血検査を定期的に行ってみてはどうでしょうか?これをしていれば確実に大腸癌にならない、この検査をしていれば必ず早期に癌が発見できる、などというものはありませんが、自分の体調や生活、身近なことに日頃から(定期的に)目を向けることで、気づくこと、見えてくることも多いと思います。気づいたことがあれば、迷わず消化器内科、外科で相談してみてください。



