輸液・点滴
公立長生病院 診療部長 阿部恭久
今回は《輸液・点滴》についてお話をします。
輸液とは、一般的に、ボトルやバッグに入った50ml以上の注射液のことで、輸液セットを通し、静脈内に、ポタポタと一滴ずつ落ちていくので、「点滴」とも言っています。
おなかをこわして入院している方や、手術後などで十分食べられない方などに入れている、よく見かけるもののことです。患者さんによっては同じものを数本使用していたり、一人で何種類ものボトルを入れたり、状態によっていろいろ違っています。
そこで、この輸液・点滴は何の目的で、どんな場合に、何を投与しているのかについて説明します。
輸液の目的は大きく分けて3つあります。
(1) 体液の管理
(2) 栄養の管理
(3) その他
(1) 体液の管理
これが最も重要な目的です。下痢や嘔吐 、あるいは多量の汗をかいた後など脱水状態になった場合や、いろいろな病気や手術などで体液のバランスを保つうえで口から十分摂れない場合、さらに、急激な出血で血液量が足りなくなった場合などに行います。直ちに体液のバランスをとらなければ生命に関わる状況となってしまうことがあり、輸液により水分や電解質を補充することです。
(2)栄養の管理
いろいろな病気や、手術などの理由で、口からの栄養摂取が十分できない場合、糖分、アミノ酸、脂質などを補充していきます。
(3)その他
静脈を確保し、いろいろな薬剤を病状に応じて投与するという目的です。
何を入れているのでしょうか。
◆水分や電解質
成人では体重の約60%が水分量・体液です(小児では70から80%、老人では50%くらい)。体液は細胞内液40%と細胞外液20%に別れ、さらに細胞外液の4分の3が組織間液、4分の1が血漿です(体液の約5 %)。ややこしくなってきましたが、実はそれぞれ成分がちがうのです。
従って、それぞれの病態によって、失われた体液が主にどの領域なのかによって、補充しなくてはいけない内容・成分が決まってくるわけです。つまり、輸液治療をしていく場合は、主に細胞外液を補充する輸液剤、体液全体を満たす輸液剤、血漿成分を補充する輸液剤など、病態にあわせて使い分けをしていきます。昔"リンゲル"と言われていた輸液は細胞外液補充液です。
ところで、ケガをした時に自分の血液を舐めたことがあると思います。少ししょっぱいと感じたと思います。つまり体液には塩分が入っているのです。この塩分にあたるナトリウム、カリウム、クロール、カルシウムなどが体液の電解質として含まれているのです。
輸液剤は、これら何種類もの電解質を、濃度を変えてつくられているのです。
スポーツドリンクには、この電解質が入っており、体液補充を売りにしているわけです。
◆栄養分
(糖質、アミノ酸、脂質)水分や電解質の補充に加え、栄養分を補充しようということです。食べられなくても点滴からバランスよく栄養を入れたいということです。
ここで少し問題が出てきます。糖分を濃くした輸液を腕などの静脈から入れようとすると、血管に負担がかかり炎症が起きてきます。
輸液製剤は年々進化し、血管に負担がかからない程度の濃さで各栄養素が入っている製剤も作られてきています。こういったものを使うと一日1000から1200kcal(ギリギリ最低限の一日必要カロリー)のエネルギーを投与することもできますが、長期間になるとやはり無理が生じてきます。
それで は、「しば らく栄養を口から十分取れない」、「栄養を何とか点滴で入れていきたい」という場合はどうするか?中心静脈栄養という方法を用います。
主に鎖骨の下などの太い血管へ点滴を入れます。この方法をとる目安は、状況によってもちろん違いますが、栄養摂取の改善が10日から2週間以内に見込めるかどうかということになると思います。
・ ビタミン剤、微量元素剤の投与も補充していきます。
・ 肝臓、腎臓など特殊な病態に対しての輸液治療も行っていきます。
このように、点滴は、患者さんの状況によってさまざまであり、輸液製剤そのものも年々工夫され、多くの場面に対応できるようなものが作られてきています。
しかしながら、たった一本の点滴をするだけで気分が落ち着いたり、食事が摂れるようになったりなど、補充した内容以上のこともあり、点滴という治療行為の奥深さを感じることもしばしばあります。
もちろん点滴は、血管に針を刺す行為であり、痛みを伴うもので、特に血管が出にくい方にとってはつらいものです。でも、必要が生じた際には、元気回復のために、がんばりましょう。



