健康ワンポイントアドバイス10「ピロリ菌と胃・十二指腸潰瘍」 - 公立長生病院

ピロリ菌と胃・十二指腸潰瘍

公立長生病院 内科医長 三浦美貴

 ピロリ菌とは胃の粘膜に生息している細菌です。さまざまな研究により潰瘍や、胃癌、リンパ腫、胃ポリープなどの病気に深く関わって来ていることが明らかになってきました。

ピロリ菌

◆原因と疫学
 感染経路がまだはっきりとわかっていませんが、口を介した感染(経口感染)が大部分であろうと考えられています。また、衛生環境と関係していると考えられており、上下水道が十分普及していなかった世代で高い感染率となっています(40歳代以上の80%が感染しています)。予防方法はわかっていませんが、人から人への感染はないと言われており、衛生環境が整った現代では感染率は著しく減少しており、あまり神経質になる必要はないでしょう。

◆症状
 感染していることだけで、自覚症状はありません。胃・十二指腸潰瘍ではピロリ菌の感染率が90%と高く、潰瘍の発生や再発、治りにくさに関係していることがわかっているため、除菌治療をお勧めします。

◆診断
 胃カメラ(内視鏡)検査で、胃の一部を採取する生検(ウレーゼ法)で診断したり、また胃カメラをしなくても、尿素呼気試験(検査用の薬を飲み、一定の時間が経過した後で吐き出された息を調べる方法)でピロリ菌の有無を検査できます。

◆治療
 薬を内服することにより、ピロリ菌を退治する方法を【除菌療法】といいます。除菌治療は2種類の抗生物質と胃酸を抑える薬(抗潰瘍薬)の3剤を同時に、1日2回、7日間内服する治療です。内服の治療なので、入院の必要はありません。副作用は軟便、下痢、味覚異常があります。これらの症状については、個人差があり、内服の中断の必要はなく、除菌治療期間中に起こるものであり、治療が終了すると、症状は消失します。ただし、非常に頻度は少ないのですが、便に血液が混じった場合(出血性腸炎)はすぐに、内服を中止し、除菌治療は中断せざるをえません。除菌中は必ず便を確認し、またお酒は中止していただきます。

◆除菌治療の適応
 胃癌の発症を予防する効果については現在まだ検討中ですが、予防効果があるとされています。現在、胃、十二指腸潰瘍治療中の方や過去に潰瘍をしたことがある方、胃癌家系の方でピロリ菌に感染している方には治療をお勧めしています。
 ピロリ菌に感染しているだけで、潰瘍の既往がない方は除菌する必要は ありません。
 また、薬にアレルギーのある方や、肝障害の程度によっては治療できない場合があります。年齢が高くなるにつれて、除菌の成功率が低下するため、大体70歳以下の方にお勧めします。

◆除菌後は
 除菌できたかどうかの判定は、除菌治療後1ヵ月以上たってから尿素呼気試験で行っています。除菌の成功率は80~90%です。除菌が成功した場合は、抗潰瘍薬を継続する必要がなくなります。ただし、不成功に終わった方は、潰瘍の再発予防を目的として抗潰瘍薬を継続することとなります。これまでは除菌治療は生涯で一回しか保険治療が認められていませんでしたが、8月に除菌不成功例に対して二回まで除菌治療が出来るようになりました。二次除菌治療は2種類の抗生剤を1種類にして、1種類を抗寄生虫薬に変更した方法です。除菌成功者の大部分の潰瘍の再発が抑制されることがわかってきました。ただし、決して再感染をしないというわけではありませんので、一年に一回は胃カメラ検査をお勧めします。
 最近、胃の調子が悪いと感じていらっしゃる方、潰瘍の既往がある方、胃癌家系の方は、まず胃カメラで、検査後、除菌治療を行うか、検討なさってはいかがでしょうか。