健康ワンポイントアドバイス11「医療用麻薬」 - 公立長生病院

医療用麻薬

公立長生病院 副院長 阿部恭久

今回は「医療用麻薬」についてお話します。
 「医療用麻薬」とは、医療現場で使用する麻薬で、モルヒネを代表とするオピオイド鎮痛薬のことです。体内のオピオイド受容体に結合することで鎮痛効果を発揮するくすりです。オキシコドン、フェンタニルなどがあります。
 現在、多くの患者さんに使われており、非常に有効なくすりですが、いまだに多くの誤解があり、まだまだ十分にうまく使われていないのが現状と思います。ところで、現在、日本人の死因第一位は、悪性新生物(がんなど)で、約30%となっています。従って、がんにかかる可能性はもっと高くなります。がんはごく普通に私たちが関わる病気の一つなのです。
 がんは、もちろん命に関わる病気です。がんにかかっていない方でも、治療中の方でも、不安が伴います。その不安のひとつが、「痛み」だと思います。
 がんになったからといって、すべての人が痛みを感じるかというと、決してそんなことはありません。痛みがあったとしてもその強さ、程度は患者さんによってちがいます。また、がんになって早い時期から痛みを感じる人もいれば、病状が進んでから痛くなる人、病状に関わらず痛みを感じない人など、患者さんによって様々です。
 しかし、がんの痛みが強ければ、気力や意欲、すべてのことを奪っていきます。想像しただけでも憂鬱になってしまいます。
 がんの治療とともに、うまく使って痛みを取り除き、日常生活を送っていこうというための重要な道具・くすりが、痛み止め・特に医療用麻薬なわけです。
 治療の目標は、まず、痛みに妨げられないで眠れること。次に、じっとしているときに痛みがないこと。さらに、歩いたり身体を動かしたりしても痛みがないこと。
 このように設定し、くすりを選択していくわけです。医療用麻薬だけを使うのではなく、患者さんの状況に応じて、いくつもの種類の痛み止めから選択していくことになります。

さてここで、《誤解》についてです。
「麻薬」と聞き、抵抗を感じる方が多いと思います。

●麻薬中毒
 イメージは、覚せい剤中毒といったものでしょう。しかし、医療用麻薬を使用しても快楽を得ることはできません。麻薬中毒とは、くすりがほしくてたまらなかったり、極度の不安になったりなどの依存症状です。医療用麻薬をがんの痛みの治療に使用してもそのような依存症状を引き起こすことはありません。また、痛みが弱くなった場合、医療用麻薬を減量したり、やめたりすることも可能です。

●使い続けると効かなくなる
 濫用目的の違法な麻薬では、いつも同じ快楽を得ようとすると量を増やしていくことになってしまいます。しかし、痛みがある人が医療用麻薬を使用する場合は、鎮痛効果はなくなりません(病状の変化に伴ってくすりの量が増えていくことはあります)。

●使い続けると命を縮める
 副作用として、呼吸が抑制されること、意識が低下することなど重要なものがありますが、病状に合った使用と、定期的な診察がされている限り、心配ありません。

●頭がおかしくなる
 医療用麻薬を使い始めた頃、眠気や頭がぼんやりするなどの症状が出ることがありますが、徐々に安定します。ただし、病状、全身の状況により医療用麻薬以外の原因であらわれることがあります。

●モルヒネが使われるとすぐ死ぬ
 死の直前になってようやく使われていた時代が長くあり、いまだに引きずってしまっている誤解です。現在は、がん治療の早期から使われていく場合も増えており、末期だから使用するのではないのです。
 それぞれのくすりにはそれぞれ使用するためのルールがあり、また、くすりが効いているのかどうか確認をしていかなくてはいけません。
 また、痛みは、本人しかわかりません。痛みを我慢しないでください。診察の際には、遠慮せず伝えてください。くすりを上手に使って、がんの痛みから生じる精神的・肉体的行動制限を少しでも開放し、よりよい生活を得るようにしていきましょう。