健康ワンポイントアドバイス01「おなら」 - 公立長生病院

おなら

公立長生病院 外科 阿部恭久

●今回は「おなら」についてお話します。
 おなら・排ガスは、私たち外科医にとって、患者さんの状態を把握するための大事な情報のひとつです。おなかを手術すると、一時的に腸の動きが止まります。状況によりますが、数日すると徐々に腸が動き出し、排ガス、排便、そしてやっとおなかがスッキリし 、食事も摂れるようになります。腸管運動の様子や、おなかの回復状態、さらに全身状態の様子までも知らせてくれるものです。
 外科病棟に入院している方々へ、私たちは何度も、「オナラ出た?」と、おなかを触りながらたずねています。しかしながら、日常生活では、むしろ困った存在といえるかもしれません。
 おならの量、回数、においなどには個人差があり、さらにその日の体調でも変化します。おならが心配で病院を受診する方はあまりいらっしゃいませんが、気にされている方は多いと思います。そこで、おならについて少しお話します。

◆おならのガスは、どこから?
 およそ90%が、鼻やロから入った空気とされています。食事をしたり、水を飲んだりする際に、必ず空気も飲み込んでいるのです。特に、早く食べる習慣の方は、空気の飲み方も多く、また、習慣的に空気を飲み込む(呑気症)方や、緊張した時や、ストレスを感じた時に、知らぬ間に空気をたくさん飲み込んでいることもあります。
 ゲップとして外へ出せなかったものが腸へ運ばれ、おならとなります。他には、大腸で発生したガス(小腸で吸収されなかった食べ物のカスが、大腸の腸内細菌で分解され、発生します)があります。

◆おならの成分は?
 大部分が空気ですから、窒素、酸素が主です。大腸で発生したガスとして水素、二酸化炭素、メタン(これらは無臭です)、そして硫化水素があります。困ったニオイはこの硫化水素なのです。
 硫化水素とは、卵の腐ったような臭い・腐敗臭と表現される、火山の近くや、温泉で発生しているガスです。イオウ成分を含んだ食物残渣を、腸内細菌が分解していく過程で発生します。

◆食事との関係は?
 ガスの産生が多くなるのは、繊維が多い・イモ類などです。繊維成分は小腸で消化吸収されず、大腸へ送られて、腸内細菌により分解されます。その際に発酵し、ガスが発生します。
 ただし、臭いはありません。一方、くさいオナラに関係するのは、イオウ成分をもつ必須アミノ酸・メチオニンを多く含む食物で、肉類、鶏卵など動物性たんばく質、他にナッツなどがあります。「悪玉菌」と呼ばれている腸内細菌が、これらを栄養源として、発酵・増殖し、その結果、悪臭の強いおならが作られます。

◆それではどうすればよいの?
 おならの量が多いから、繊維質のものをやめたり、悪玉菌が増え、くさいおならが出るから、肉類をやめたり、等というのは、根本的に無理があります。生きていく限りおならは作られるのです、おならは出るのです。でも、それぞれ改善策はあると思います。
 まず、早食いなど、空気を飲み込むような習慣を減らすこと。緊張・ストレスを解消していくこと(簡単ではありませんが)。便秘を改善すること。そして、腸内細菌を整えることです。これが重要です。

◆腸内細菌を整える?
 そもそも、ヒトの腸内細菌というのは、細胞数にして100兆個とされ、一人の人間の細胞数70兆個とほぼ同じ程度の細胞数が存在します。ヒトが生まれてから、それぞれ生活してきた中で作り上げた、巨大な細胞集団です。言わば『もうひとつの自分』であり、加齢や、生活環境で変化を続けていくものなのです。
 腸内細菌は、免疫系の最前線で働き、有害物質や発癌物質の分解・排泄、病原菌・有害菌の感染防御や、ホルモンやビタミンの産生、さらに脂質代謝の活性化など、ほかにも非常に重要な役割を担っています。私たちは、腸の中に、巨大な工場を持っているわけで、私たちが食べたものでこれを養い、これを育てているのです。
 ですから、偏った食事をすると、この工場を偏ったものにしていくということです。でも遅くはありません。腸内細菌の顔ぶれや構成は、短期間で変化していきます。バランスのとれた食生活、ストレスや疲れを貯めないような生活をし、『もうひとつの自分』を育てていきましょう。
 「おなら」は、腸からの信号であり、最近の自分を表現しているものかもしれません。その信号を受け止め、日々の体調管理に役立てていきましょう。もちろん、おなかの調子がよくない場合は、検査をすることも重要です。